ラウダート・シ ーなぜ今、気候変動なのかー

M.K.

今回のシンポジウム、「気候変動とわたしたち」を開催するにあたり、ラウダート・シを読み返してみました。気候変動や環境問題は聞き慣れてしまい、もう新しいことはない、と思うでしょうか。なぜ気候変動や環境問題が今、注目されているのか、なぜフランシスコ教皇はラウダート・シを出したのか、考えてみたいと思います。

ラウダート・シの中では「インテグラル・エコロジー(integral ecology)」という言葉が何度も出てきます。日本語では「総合的なエコロジー」、あるいは「全人的なエコロジー」と訳されています。エコロジーや環境問題は「科学」の領域に含まれると思うかもしれません。しかしフランシスコ教皇は、インテグラルという形容詞をつけて、エコロジーは科学的な問題に留まらず、社会的、文化的な問題であり、さらに、わたしたち人間の問題であるということを強調しています。

例えば、今の新型コロナウイルスのパンデミックはどうでしょうか。原因は、ウイルスの変異という「科学的な」問題であると捉えられますが、野生生物が多く住んでいる自然を人間が破壊したことによって、野生生物が人間と接触するようになり、野生生物に閉じ込められていたウイルスが人間にも感染するようになったと言われています。そして、世界中の人びとが被害を受けるわけですが、先進国に分類されている日本に住むわたしたちの生活はどうでしょうか。この1年以上もの間、さまざまな制限を受けていますし、ライフスタイルを変更せざるを得ませんでした。つらい思いをしている人もいますし、一生懸命日々はたらいている人もたくさんいます。影響を受けていない人はいないと思います。しかし、最も被害を受けるのは貧しい人たちです。途上国では、医療が脆弱なためにより厳しい対策を取らざるを得ません。学校が閉じてしまえばオンラインでの授業を受けることも難しいでしょう。ワクチン外交と言われていますが、ワクチンがなかなか届かない国もあります。そうした国で感染が広がれば、また新たな変異が生じる可能性もあり、先進国にもまた影響が及ぶことになります。これはもはや科学的な問題ではなく、社会的、政治的な問題にまで及んでいます。だからインテグラルに、総合的に考える必要がある、とフランシスコ教皇は言っているのです。わたしたちはこのように最も影響を受けやすい脆弱な人びとのことをどれほど考えられているでしょうか。そして、わたしたちの生活が自然を破壊するような原因になっていることにどれほど気づいているでしょうか。フランシスコ教皇は「反応の鈍さ」と表現しています。

対策についても同様に、コロナウイルスに対して、新しい治療薬を創る、ワクチンを打つといった「科学的な」解決策を探ろうとするだけではなく、社会の構造を変えるような根本的な、ドラスティックな変化が必要とされています。わたしたち自身も、原因の一部に取り込まれてしまっているからです。

わたしたちが買い物をするとき、スーパーに並んでいるモノの「今」しか見ません。もしかして野生生物が住んでいるような多様な自然を破壊しながら作られている製品がスーパーに並んでいるかもしれません。そして消費し終わって、ゴミとなったものがどう処理されているのか、わたしたちは気に留めません。お金を払っているから許されるのでしょうか。わたしたちはこうした「消費文化」の構造の中に取り込まれていて、気づかないうちに原因の一部になっているのです。

このように、わたしたちの生活と密接している気候変動や環境問題ですが、今一度、社会的な、人間的な、わたしの問題として捉え直してみませんか?みなさまのご参加、お待ちしております。

申し込みはこちらから:https://forms.gle/QHZMDjSMc1tk5TbF8

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